1230.jpg
熊本地震デマツイートで逮捕者 「抑止のための『見せしめ』では」弁護士が指摘
2016年07月21日 09時43分

熊本地震が発生した直後に、「動物園のライオンが逃げた」などとウソの内容をツイッターに投稿し、動物園の業務を妨害したとして、神奈川県に住む20歳の男性が7月20日、偽計業務妨害の疑いで逮捕された。

報道によると、男性は4月14日の熊本地震の発生直後に、「地震のせいで、うちの近くの動物園からライオンが放たれたんだが」などとウソの内容をツイッターに投稿し、熊本市動植物園の業務を妨害した疑いがもたれている。

投稿のあと、熊本市動植物園には問い合わせなどの電話が100件を超え、獣舎などの点検がスムーズに行えなかったほか、警察にも「ライオンが逃げているので避難できない」といった相談が相次いだ。警察はサーバーを解析するなどして捜査を進めた。男性は警察の調べに対し「悪ふざけでやってしまった」と供述し、容疑を認めているという。

災害時にデマを流し、偽計業務妨害をしたとして逮捕されるのは全国で初めてだと報じられているが、なぜ今回は逮捕までにいたったのか。インターネットの問題に詳しい清水陽平弁護士に聞いた。

熊本地震が発生した直後に、「動物園のライオンが逃げた」などとウソの内容をツイッターに投稿し、動物園の業務を妨害したとして、神奈川県に住む20歳の男性が7月20日、偽計業務妨害の疑いで逮捕された。

報道によると、男性は4月14日の熊本地震の発生直後に、「地震のせいで、うちの近くの動物園からライオンが放たれたんだが」などとウソの内容をツイッターに投稿し、熊本市動植物園の業務を妨害した疑いがもたれている。

投稿のあと、熊本市動植物園には問い合わせなどの電話が100件を超え、獣舎などの点検がスムーズに行えなかったほか、警察にも「ライオンが逃げているので避難できない」といった相談が相次いだ。警察はサーバーを解析するなどして捜査を進めた。男性は警察の調べに対し「悪ふざけでやってしまった」と供述し、容疑を認めているという。

災害時にデマを流し、偽計業務妨害をしたとして逮捕されるのは全国で初めてだと報じられているが、なぜ今回は逮捕までにいたったのか。インターネットの問題に詳しい清水陽平弁護士に聞いた。

●「正常な業務に支障を来す状況になった」

「デマを発信すること自体、全てが違法かというと必ずしもそうではありません。誰にも迷惑をかけない類いのものであれば、また、デマであったとしても誰にも見向きもされないものであれば、問題にはされません」

清水弁護士はこのように述べる。今回のケースは、なぜ問題とされたのか。

「デマを発信することにより他人に迷惑を与える行為は、業務妨害罪が成立する可能性があります。

具体的には、デマを流すことにより本来不要であった業務を発生させたり、正常な業務に支障を来すような状況になった場合です。

本件では、100件を超える電話の対応のほか、獣舎などの点検がスムーズに行えなかったといった正常な業務への支障が生じているため、業務妨害罪が成立するといえるでしょう」

●逮捕まで必要な事件だったのか

逮捕されたケースは全国で初めてということだが、なぜ、逮捕にまでいたったのか。

「逮捕をすることができる場合は、罪証隠滅のおそれや、逃亡のおそれがある場合などと限定されているので、形式的にはこれに当たると判断したからといえるでしょう

もっとも、本件では、すでにサーバーを解析するなどして証拠は押さえており、本人も容疑を認めているようです。さらに、業務妨害罪自体が3年以下の懲役ということで、そこまで重罪というわけではありません。

罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれは基本的にないといえる場合といえそうです。そのため、同じような事件を抑止するための『見せしめ』的な要素があるように感じざるを得ません」

逮捕は、やりすぎだったということだろうか。

「そうではありません。本人は面白半分でやったことであろうと思いますが、被災地が混乱している中で、さらに混乱させるようなデマを流すことは、当然許されるべきことではありません。その責任が追及されることは当然と思います。その意味で、このようなものを摘発することは、よいことと思います。

ただ、他の、今回のケースより悪質な事件においても、逮捕がなかなかされないものも多い中、事件類型として逮捕が必要な事件とは必ずしも思えません。

また、本件は実名報道がされているようですが、果たして実名報道まで必要なものなのかという考えもあります(そもそも実名報道否定派ですが)。

摘発すること自体についてはよいと思うものの、このような恣意的とも思える運用には、少々疑問があります」

清水弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る