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ウーバーに振り回される配達員は労組法の「労働者」なのか 11月25日、都労委命令がもつ意味
2022年11月22日 12時04分
#日本の雇用と労働 #プラットフォームワーク

団体交渉を拒否されたとして、ウーバーイーツ配達員でつくる「ウーバーイーツユニオン」が、東京都労働委員会に不当労働行為の救済申立てをしている件で、11月25日に命令が下される。

ポイントとなるのは、ウーバーイーツのように、デジタルのプラットフォーム上で働く人たちが、労働組合法の「労働者」と認められるかどうかだ。

世界的に、プラットフォーム上で働く人たちの法的保護が議論になる中で、都労委の命令は、日本における今後の保護のあり方を考えていくうえで、大きな意味を持ってくる。

団体交渉を拒否されたとして、ウーバーイーツ配達員でつくる「ウーバーイーツユニオン」が、東京都労働委員会に不当労働行為の救済申立てをしている件で、11月25日に命令が下される。

ポイントとなるのは、ウーバーイーツのように、デジタルのプラットフォーム上で働く人たちが、労働組合法の「労働者」と認められるかどうかだ。

世界的に、プラットフォーム上で働く人たちの法的保護が議論になる中で、都労委の命令は、日本における今後の保護のあり方を考えていくうえで、大きな意味を持ってくる。

●世界中で広がりを見せる「ギグワーク」

デジタルのプラットフォーム上で、好きな時に単発で働くことは「ギグワーク」とも呼ばれている。

典型的なものは、ウーバーのライドシェアだ。ドライバーは、ウーバーのプラットフォームを通じて依頼があった人を自家用車に乗せて、目的地まで運ぶというものだ。素人でもタクシーのような仕事ができるため、既存のタクシー業界を破壊するものだとして、世界各地で大きな問題になった。

日本では、規制の関係でライドシェアは実現していないが、飲食物の配達をする「ウーバーイーツ」が広がりを見せている。利用者はウーバーイーツのアプリで飲食物の宅配を依頼し、それを受けて、プラットフォームが配達員にリクエストを提示。配達員がそれに応じると、飲食店に飲食物を取りにいって、依頼者に届ける仕組みだ。コロナ禍の副業ブームなどもあって、メジャーな存在となった。

ところが、ウーバーイーツのプラットフォーム上で働く人たちで結成された「ウーバーイーツユニオン」が、配達員の補償や距離計算の誤りなどについて、ウーバーの日本法人に団体交渉を申し入れたところ、拒否されたとして、2020年3月16日に東京都労働委員会に不当労働行為の救済申立てをしている。

●労働組合法の「労働者」と認められるか

団体交渉が認められるためには、労働組合法の「労働者」であることが求められる。労働基準法・労働契約法の「労働者」が使用従属性で判断されることに比べると、労働組合法は経済的従属性を中心に判断されるものであり、労基法や労契法よりも相対的にハードルが低いとされる。

具体的には、基本的な判断要素として、 ①事業組織への組み入れ ②契約内容の一方的・定型的決定 ③報酬の労務対価性 がある。

さらに補充的な判断要素として、 ④業務の依頼に応ずべき関係 ⑤広い意味での指揮命令下の労務提供、一定の時間的場所的拘束 ⑥顕著な事業者性 もある。

例えば、①については、ウーバーの配達員がどれだけ事業運営にとって不可欠であり、中核となる労働力であるかどうか、などが検討されることになる。

都労委の審問(12月9日、弁護士ドットコム撮影)

●アカウント停止や「干される問題」などが主張されてきた

都労委の審査を通じて、ユニオン側は、いかに配達員たちがウーバー側に組み込まれているか、その関係が一方的であるかを主張してきた。

典型的なものは、アカウントの停止だ。

ユニオン側は、ある配達員が転倒事故を起こして負傷した際に、ウーバーがアカウントの一時停止を行い、永久停止の警告もしたことを挙げている。

また、別の配達員に対して、フェイスカバーやマスクで口と鼻を覆っていなかったとして、アカウントの利用停止措置を示唆した事例も踏まえ、アカウント停止の警告で配達員をコントロールしようとしていると主張している。

また、配達員が配達リクエストを拒否していると、しばらく次のリクエストが入りにくくなったり、条件の悪い配達リクエストがくる「干される問題」があるとも指摘している。ウーバー側はこの問題を否定している。

<参考記事> ウーバーイーツ責任者「あくまでプラットフォーム」を強調 都労委で明かされた実態

●世界的に議論が活発化する中、都労委の決定がもつ意味

不当労働行為が認められて、救済命令が出ると、ウーバー側は団体交渉に応じる義務が出てくるが、今回はあくまで東京都労働委員会の決定となるため、不服がある場合は、中央労働委員会での再審査や裁判にまで発展する可能性があり、最高裁までいくと最大で「5審制」となる。

このため、救済命令が出ても、ウーバーが応じない場合、かなりの時間がかかる可能性がある。

また、今回争われているのはあくまで、労働組合法の「労働者」であるかどうかだ。認められた場合には団体交渉が可能になるが、労働時間規制や解雇規制などに関連した労働基準法・労働契約法と直結する話ではない。

世界的には、ギグワーカーの労働者性を認める判決も出ており、保護の流れが強まっている。例えば、イギリスでは、就業者3区分(被用者、労働者、個人事業主)の中で、ウーバーの運転手が個人事業主ではなく、一定の権利が認められる労働者に該当するという最高裁判決が出ている。

日本でも、岸田政権がフリーランス新法を推進するなど、フリーランス保護の流れが生まれる中、どうギグワーカーを政策的に保護するのかについては、今後の大きな課題となる。

ユニオンの土屋俊明執行委員は、都労委の命令を前に、「もの申しても門前払いされることはおかしいということで、これまで主張を続けてきた。安心して働き続けるために、労使間交渉が必要だ」と話している。

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