17692.jpg
子どものワンストップ支援センター、日本はたった2カ所…性被害の緊急対策に課題は?
2023年08月07日 09時59分

ジャニーズ事務所の創業者・ジャニー喜多川氏(享年87)による性加害問題を受けて、政府は7月26日、子どもや若者の性被害防止のための緊急対策を公表しました。

緊急対策は、(1)加害を防止する、(2)相談・被害申告をしやすくする、(3)被害者支援の3つを強化するもので、相談窓口を周知したりワンストップ支援センターなどの支援体制を充実させたりする内容が盛り込まれています。

ただ、子どもの性被害にくわしい飛田桂弁護士は「相談・被害申告をしやすくする前に、子ども独自のシステムを作る必要があります」と話しています。飛田弁護士に聞きました。

ジャニーズ事務所の創業者・ジャニー喜多川氏(享年87)による性加害問題を受けて、政府は7月26日、子どもや若者の性被害防止のための緊急対策を公表しました。

緊急対策は、(1)加害を防止する、(2)相談・被害申告をしやすくする、(3)被害者支援の3つを強化するもので、相談窓口を周知したりワンストップ支援センターなどの支援体制を充実させたりする内容が盛り込まれています。

ただ、子どもの性被害にくわしい飛田桂弁護士は「相談・被害申告をしやすくする前に、子ども独自のシステムを作る必要があります」と話しています。飛田弁護士に聞きました。

●「窓口だけ」があればいいものではない

子どもの性被害について特化した取り組み自体は日本ではなかったので、緊急対策が実施されること自体は第一歩としてよかったと思います。ただ、今回の緊急対策は「こども・若者の性被害防止のための」という看板ですが、中身が「大人の性被害防止」のパッケージに子どもを足した形になっています。

相談窓口は「窓口だけ」があればいいものではありません。特に、子どもの性被害の場合は、その場で児相に通告するのかを検討したり、児相に通告しない場合には被害の事実確認をその場でおこなったりします。たとえば、レイプキットが必要だとなったら、すぐに使える場所に一緒に行かなければなりません。

アメリカには、虐待を受けた子どもたちに対応する専門家を1カ所に集めた「Children’s Advocacy Center」(通称CAC)が900カ所以上あります。一方、日本には子どものためのワンストップ支援センターが2カ所しかありません。子どもたちに被害を開示をしてもらうための仕組みができていないんです。

●通報後の検証は?

保育所などでのわいせつ行為についても通報義務を設けることが検討されているようですが、通報された後の検証が足りていないと思います。子どもを預かる施設で性被害が起きた場合、対応や調査に関する統一的なガイドラインがあるべきです。いじめと同じように、事実関係を明確にするための調査がおこなわれ、関係者に情報提供される必要があります。

行政が強制的に手を入れることが難しいとよく言われています。民間に対してできることには限界があると思いますが、子どもを預かるにあたって安心できる場所と示される認定制度のようなものが必要ですし、ガイドライン通りの再発防止策を取らなかった場合のペナルティーなども規定すべきだと思います。

●そもそも被害者の実態を把握できていない

子どもの性被害が大人と大きく違うところは、ほとんどグルーミング(手なづけ)がおこなわれていることです。子どもは自分に何が起きたのか、整理して話すことができません。また、「お母さん、びっくりしちゃったね」などの声かけでも、子どもの開示は止まってしまうことがあります。大人は子どもの言葉をきちんと理解できるようにして、その後どんな手順で何をすべきかを熟知していなければいけません。

「相談・被害申告への適切な対応のための体制整備」では、性犯罪を念頭にした体制整備が言われていますが、関係各省庁は、そもそも被害者の実態を把握できていません。実態を前提にした政策が作られないと本末転倒です。

子どもに対する性犯罪全体のうち、警察が関わるのはほんの一握りです。証拠収集も重要ですが、それ以前に子どもの安全確保が大切です。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る