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校庭で野球をしていた少年たち 「建造物侵入罪」で現行犯逮捕はやりすぎ?
2013年07月19日 15時15分

小学校の校庭に立ち入り、野球をした疑いで6月下旬、17歳の少年2人が逮捕された。共同通信によると、少年2人は仲間の10人と一緒に校庭で野球をしていたが、通報で駆けつけた警察官の説得に応じず、「警察に(出ていけと)言われる筋合いはない」と居座ったため、建造物侵入容疑で現行犯逮捕された。2人は容疑を認め、「(校庭の)利用許可を断られたので、腹いせにやった」と供述しているという。

もちろん2人は今回の事態を深く反省すべきだろう。だが、そもそもは日曜日の午後2時半ごろから1時間程度、仲間たちと小学校の校庭で野球をしていただけとも言えるし、かつて日曜・祝日の学校の校庭は、一般市民が誰に断るでもなく自由に母校の校庭に入り、キャッチボールやサッカーをすることは「普通のこと」であったように思える。

確かにいまは物騒な時代で、小学校の安全対策には万全を期さねばならないのだろう。とはいえ、今回のようなケースで、少年を建造物侵入容疑で現行犯逮捕し、取り調べることはよくあることなのだろうか。川原俊明弁護士に聞いた。

●昔と今で、学校をめぐる環境は大きく変わった

――休みの日に学校の校庭に入ってはいけないのか?

「私も子どものころは、休みの日に学校の校庭でよく遊んでいました。思い起こせば、当時はおおらかな時代だったなと思います。しかし、ここ十数年の間に大阪・池田小学校児童殺害事件など、無防備な児童が巻き込まれる事件が次々と起こりました。

その影響により、父兄をはじめとする地域社会の要請として、また、万一の事故の際に、学校側の責任問題になることを避ける意味でも、部外者がむやみに学校の敷地内に入れないように厳しく管理することが求められています」

――校庭を利用したいときは、どうすればいい?

「法律上、部外者が学校の施設を利用するには学校の利用許可を得る必要があります。昔はこの利用許可の手続は、いい意味でルーズだったのですが、いまは厳格に運用されているわけです。ですから、許可を受けていない者は無断で利用できませんし、地域の少年野球やサッカーチームなど成人の監督者がいる団体でも、事前に学校に利用許可を受けていることが多いようです」

――今回の少年達の行動は、報道されているように「犯罪」にあたるのか?

「このケースでは、少年達の行動は複数の犯罪に該当しています。まず、校庭の利用許可を断られたにもかかわらず、少年が仲間とともに校庭で野球をした、というのですから、『建造物侵入罪』にあたります。ただ、実態は元気な少年達が校庭で野球をしていただけですから、このレベルにとどまるなら『勝手に入らないで』といった注意で終わるべきだったでしょう。

しかしこのケースでは、通報で駆けつけた警察官の説得に応じず、『警察に(出て行けと)言われる筋合いはない』と居直ったという事情が加わります。この少年達の退去拒否は、『不退去罪』にあたります。これも現行犯です」

――とはいえ、現行犯逮捕するのは厳しすぎないか?

「少年達は『事前の使用許可を断られた腹いせ』と供述していることから、無断利用は違法行為であることを認識していたといえます。そして、警察の説得に対して強い態度に出たことや、十数人の少年が集まっていたこと、さらに警察官への抵抗がエスカレートすれば『公務執行妨害罪』や『傷害罪』などの重い犯罪に発展する可能性があったことからすれば、警察官の『現行犯逮捕』という措置が『厳し過ぎ』ということにはならないでしょう」

――逮捕された少年達はどうなるのか?

「逮捕されたのは17歳の少年なので、少年法の適用により、本来の刑事裁判でなく、家庭裁判所でお目玉を食らうことになります。少年といえども、17歳ともなれば、もっと社会性のある行動を採るべきだったと思います」

昔と今とでは、社会的な背景が大きく異なることからすれば、今回の少年2人の現行犯逮捕はやりすぎとはいえないようだ。世知辛い世の中になったと残念な気もするが、これが今の社会の現実なのだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

小学校の校庭に立ち入り、野球をした疑いで6月下旬、17歳の少年2人が逮捕された。共同通信によると、少年2人は仲間の10人と一緒に校庭で野球をしていたが、通報で駆けつけた警察官の説得に応じず、「警察に(出ていけと)言われる筋合いはない」と居座ったため、建造物侵入容疑で現行犯逮捕された。2人は容疑を認め、「(校庭の)利用許可を断られたので、腹いせにやった」と供述しているという。

もちろん2人は今回の事態を深く反省すべきだろう。だが、そもそもは日曜日の午後2時半ごろから1時間程度、仲間たちと小学校の校庭で野球をしていただけとも言えるし、かつて日曜・祝日の学校の校庭は、一般市民が誰に断るでもなく自由に母校の校庭に入り、キャッチボールやサッカーをすることは「普通のこと」であったように思える。

確かにいまは物騒な時代で、小学校の安全対策には万全を期さねばならないのだろう。とはいえ、今回のようなケースで、少年を建造物侵入容疑で現行犯逮捕し、取り調べることはよくあることなのだろうか。川原俊明弁護士に聞いた。

●昔と今で、学校をめぐる環境は大きく変わった

――休みの日に学校の校庭に入ってはいけないのか?

「私も子どものころは、休みの日に学校の校庭でよく遊んでいました。思い起こせば、当時はおおらかな時代だったなと思います。しかし、ここ十数年の間に大阪・池田小学校児童殺害事件など、無防備な児童が巻き込まれる事件が次々と起こりました。

その影響により、父兄をはじめとする地域社会の要請として、また、万一の事故の際に、学校側の責任問題になることを避ける意味でも、部外者がむやみに学校の敷地内に入れないように厳しく管理することが求められています」

――校庭を利用したいときは、どうすればいい?

「法律上、部外者が学校の施設を利用するには学校の利用許可を得る必要があります。昔はこの利用許可の手続は、いい意味でルーズだったのですが、いまは厳格に運用されているわけです。ですから、許可を受けていない者は無断で利用できませんし、地域の少年野球やサッカーチームなど成人の監督者がいる団体でも、事前に学校に利用許可を受けていることが多いようです」

――今回の少年達の行動は、報道されているように「犯罪」にあたるのか?

「このケースでは、少年達の行動は複数の犯罪に該当しています。まず、校庭の利用許可を断られたにもかかわらず、少年が仲間とともに校庭で野球をした、というのですから、『建造物侵入罪』にあたります。ただ、実態は元気な少年達が校庭で野球をしていただけですから、このレベルにとどまるなら『勝手に入らないで』といった注意で終わるべきだったでしょう。

しかしこのケースでは、通報で駆けつけた警察官の説得に応じず、『警察に(出て行けと)言われる筋合いはない』と居直ったという事情が加わります。この少年達の退去拒否は、『不退去罪』にあたります。これも現行犯です」

――とはいえ、現行犯逮捕するのは厳しすぎないか?

「少年達は『事前の使用許可を断られた腹いせ』と供述していることから、無断利用は違法行為であることを認識していたといえます。そして、警察の説得に対して強い態度に出たことや、十数人の少年が集まっていたこと、さらに警察官への抵抗がエスカレートすれば『公務執行妨害罪』や『傷害罪』などの重い犯罪に発展する可能性があったことからすれば、警察官の『現行犯逮捕』という措置が『厳し過ぎ』ということにはならないでしょう」

――逮捕された少年達はどうなるのか?

「逮捕されたのは17歳の少年なので、少年法の適用により、本来の刑事裁判でなく、家庭裁判所でお目玉を食らうことになります。少年といえども、17歳ともなれば、もっと社会性のある行動を採るべきだったと思います」

昔と今とでは、社会的な背景が大きく異なることからすれば、今回の少年2人の現行犯逮捕はやりすぎとはいえないようだ。世知辛い世の中になったと残念な気もするが、これが今の社会の現実なのだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

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