8720.jpg
「調査捕鯨」で日本敗訴――国際司法裁判所の判決で「クジラ食文化」は消滅する?
2014年04月19日 12時26分

日本の調査捕鯨が苦境に立たされている。南極海での調査捕鯨をめぐって、オランダ・ハーグにある国際司法裁判所(ICJ)が、現在の方法の捕鯨を中止するよう命じる判決を言い渡したからだ。

日本政府は「深く失望しているが、判決に従う」とコメント。今年末より行う予定だった次回の南極海での調査捕鯨を中止し、さらに、北西太平洋で行っている調査捕鯨についても、実施はするが規模を縮小することを決めた。

今回の裁判は、オーストラリア政府が2010年に「年間数百頭もの捕鯨は科学的ではない。実態は商業的な捕鯨だ」として、訴えをおこしたことがきっかけで始まった。今回の敗訴をうけ、日本の捕鯨やクジラ食文化はどうなってしまうのだろうか。国際法にくわしい作花知志弁護士に聞いた。

日本の調査捕鯨が苦境に立たされている。南極海での調査捕鯨をめぐって、オランダ・ハーグにある国際司法裁判所(ICJ)が、現在の方法の捕鯨を中止するよう命じる判決を言い渡したからだ。

日本政府は「深く失望しているが、判決に従う」とコメント。今年末より行う予定だった次回の南極海での調査捕鯨を中止し、さらに、北西太平洋で行っている調査捕鯨についても、実施はするが規模を縮小することを決めた。

今回の裁判は、オーストラリア政府が2010年に「年間数百頭もの捕鯨は科学的ではない。実態は商業的な捕鯨だ」として、訴えをおこしたことがきっかけで始まった。今回の敗訴をうけ、日本の捕鯨やクジラ食文化はどうなってしまうのだろうか。国際法にくわしい作花知志弁護士に聞いた。

●「判決」に強制的に従わされるわけではない

「国際司法裁判所での判決は、日本敗訴というものでした。

ただ、国際司法裁判所の判決には、国内の裁判所の判決のような『強制的執行力』がない、という特徴があります。

つまり国際司法裁判所の判決は、敗訴した国に、強制的に従わせることができないのです」

何の処罰もされないということだろうか?

「国際司法裁判所の判決に敗訴国が従わなければ、外交的な制裁や経済的な制裁を受けることは考えられます。ただ、法律上の力として、強制的に判決が実現されることはないのです」

つまり、今回の判決をうけて、どこかの国や組織の船が南極海に現れ、日本の調査捕鯨を強制的にストップさせる、なんてことはないわけだ。

●「法が支配する社会」に向けて、判決は尊重されるべき

逆に、そのような判決に、どんな意味があるのだろうか。

「強制的執行力がない点をとらえて、国際法は法なのか、という議論がされることもあります。

しかしながら、国際社会を、国内と同じように、『力が支配する世界』から『法が支配する世界』へ変えていくために、国際司法裁判所の判決が尊重されることが望ましいことは言うまでもありません」

作花弁護士はこのように述べる。日本は判決に従うべきだということだが・・・。

「今回の判決で敗訴した日本は、その後の行動によって、国際社会を『法が支配する世界』に変えていくための役割を担っているとも言えるわけです」

●条約の範囲内の「調査捕鯨」ならばOK

結論としては、日本は調査捕鯨を止めるべき、という話なのだろうか。

「今回の国際司法裁判所の判決は、現段階における日本の捕鯨(調査の計画や実施方法)は調査捕鯨とは言えない、というものでした。

したがって、日本としては、国際捕鯨条約における調査捕鯨に合致する範囲内で捕鯨を行う、という手段があります」

その範囲ならば捕鯨も可能ということなので、いきなり日本の食卓からクジラ肉が消え去るということはなさそうだが・・・。

今後の「調査捕鯨」は、どんな形で行われることになるのだろうか。作花弁護士は「現在、日本政府は判決内容を精査していると思いますので、その評価と今後の対応が注目されます」と話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る